愛しのフェイクディスタンス




***


 雅人の家に帰宅してからは案の定、悪戦苦闘だった。
 なんせ久々の料理だ。
 サラダチキンはただ茹でるだけではパサパサになってしまった記憶しか無い。
 その為ネット検索するところから始まる。
 
(うう……こんなことならお肉コーナーのとこにあった出来てるやつ買っておけば良かった)

 これは雅人の体調を気遣うふりをしながら、半分くらいは女っぷりをアピールしたいたい企みに対してバチでも当たったのだろう。
 なんて後悔しても遅いので、調べるも。
 この家に蒸し器はあるのかないのか。収納部分をさっと見た感じそれらしきものはないようだ。
 圧力鍋も見当たらない。
 
 調理器具を探している間に帰宅してからかなりの時間が経ってしまっている。
 こうはしていられない! 優奈は一番手っ取り早そうな電子レンジでのレシピを参考にしてみることにした。
 
(お酒とか、えーっと調味料混ぜて浸して……え! 二十分も置いとくの!?)
 
 時間掛かるなぁ、と頭を抱えた後。
 待っている間にレタスをちぎりトマトをスライスして冷蔵庫に入れておく。
 卵焼きも今の間に作ってしまおう、とせっせと格闘してる間に、とっくに二十分が経過した。
 急いで鶏肉を入れてあった耐熱皿にラップをかけてレンジに入れる。
 ひっくり返してもう一度。
 
(あ! ダメじゃん、書いてるとおりに火が通ってない! えぇ~よくわからないけどもう一度レンジに入れて……)
 
 繰り返しているうちになんとか火が通ったようだ。
 まだ熱いけれど、卵焼きと一緒に食べやすい大きさに切っていく。

(粗熱を取ってから切るって、そもそも粗熱って何だ?)

 あいにくそれを調べている余裕はなく。
 
 卵とハム、トマトにレタスを挟んだミックスサンドらしきもの。
 結局しっとりは出来上がらなかったサラダチキンとレタスを挟んでチキンサンド。
 自分はこんなに手際が悪かったのか……と、落ち込んでいると玄関の方で音がした。

(今何時!?)

 時計を見ると二十三時。
 なんと自分は約二時間もサンドウィッチ作りに時間を使っていたのか? しかも今日に限って雅人の帰宅が早い。
 いや、とても喜ばしいことなのだけれど、どうしたものか。
 勝手にキッチンを使っておいて荒れ果てたままではないか。

「お、おかえりなさ~い、まーくん」

 焦りながらもパタパタと小走りで廊下を進み玄関にいる雅人を出迎える。

「優奈、まだ起きてたのか?」

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