愛しのフェイクディスタンス




(あ、そっか……)

 そこで優奈はふと気がつく。
 以前会った琥太郎への態度や、先程のマキへの態度など。
 雅人はある程度親しく、
 そして気を許している”対等”と思っている相手にはこのような態度なのかもしれない。

 優奈は酷く羨む気持ちを顔には出さないように必死に力を込めて笑顔を保つ。

「奥村さん、初めまして。瀬戸優奈です、よろしくお願いします」

 改めて挨拶をしたけれど、目の前の奥村から返事がこない。不安に思った優奈が顔を上げると、彼はハッとしたようにペコリと頭を下げた。

「こ、こちらこそ……! 瀬戸さんが来てくれて有難いです、ほんと、高遠さんも琥太郎さんも人遣い荒いから」

 慌てたように早口で言った奥村の背後から「おーい、いきなり何吹き込んでんだぁ、お前は」と、聞いたことのある声。

「坂下さん! お久しぶりです」

 雅人のところに住まわせてもらうことが決まった日、顔を合わせたことがある坂下琥太郎だった。

「優奈ちゃん、久しぶり。なんかマキが余計な口出したみたいで、当初の予定と変わっちゃってごめんな」
「いえ、大丈夫です! 今日からよろしくお願いします」

 優奈が頭を下げると「そんなかしこまるなって!過保護なお兄ちゃんがうざいからさ」と、雅人を指差して愉快そうに笑い声をあげる。
 副社長である琥太郎だが、気さくな雰囲気はあの時と変わらなくて。
 優奈は少しだけホッとして胸を撫で下ろした。

 
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