たとえ9回生まれ変わっても
お父さんが帰ってきて、テーブルの上にご馳走が並んだ。
大量のパンに、サラダにスープ、ミートローフ、魚のグラタン。
おばあちゃんの髪はほとんど白に近い金髪で、なんとなくシオの毛並みの色に似ていると思った。
よく喋る人だった。
ビー玉みたいに丸くて大きな瞳と大きな口が、忙しなくよく動く。
そして、よく食べる。
パンを食べ、サラダを食べ、スープを飲み、大きなミートローフをほとんどひとりで平らげてしまった。
おばあちゃんが来るから大量に食料を用意しなくちゃ、と言ったお母さんの言葉がようやくわかる。
いったいこんな細い体のどこに入るのかと不思議に思うくらい食べる。
食べて食べて食べまくり、ひとりでテーブルに並んだ料理の半分をあっという間に消化した。
呆気にとられるわたしに、おばあちゃんはキリッと先生らしい目を向けた。
「あなたは痩せすぎよ。もうちょっと食べなさい」
ほら、とわたしの目の前に置かれたお皿には、山盛りおかずが乗せられた。
「さっきから気になってたけど、この家には猫がいるの?」
ご飯を食べ終わったあと、おばあちゃんが尋ねた。
「去年まではいたわ。でも、急に出て行っちゃってそれっきり」
とお母さんが寂しそうに答える。