たとえ9回生まれ変わっても
一緒に部屋を出ると、朝ごはんを食べていたおばあちゃんが、わたしと紫央を見た。
お母さんとお父さんはもう店に出ていて、3人分の朝ごはんがテーブルに並んでいる。
「おはよう、アオノ」
おばあちゃんは、わたしにだけ英語で挨拶をした。
「おはよう、おばあちゃん」
わたしはぎこちなく日本語で返す。
紫央のほうは見向きもしない。
昨日から薄々感じていたけれど、おばあちゃんは紫央のことが気に入らないみたいだ。
紫央のことは、お母さんからちゃんと説明してあった。
住み込みで期間限定でアルバイトをしている男の子、と。
だけどやっぱり、素性のわからない男の子を家にあげるのをよく思っていないのだろう。
それも朝、わたしの部屋から一緒に出てきたりしたら、訝しむのも当然かもしれない。
だけど、無視することはないのに。
たしかに家族じゃない。
だけど……
紫央だって、いまはこの家で一緒に暮らしているのに。
紫央がこの家にいないものとして扱われているみたいでモヤモヤとする。
それに、昨日の夜は部屋にこもったままおばあちゃんと顔をあわせずに寝てしまった。
……気まずい。
緒にご飯、食べたくないなあ。
会えるのを楽しみにしていた。
たまにしか会えないお母さんのお母さん。
わたしと同じ色の目をした人。
だけどいまは、おばあちゃんの目が、冷たい氷みたいに見える。
透き通った青空みたいな紫央の青い目とは、全然違う。