たとえ9回生まれ変わっても



12月24日。

クリスマスイブは、朝から雪が降っていた。

いつものように、紫央と向かいあって朝ごはんを食べる。

大好きなふわふわの白いパンと、砂糖をたっぷり入れたカフェオレ。

「雪積もるかなあ」

紫央が窓の外を眺めながら言う。

「明日も雪予報だから、積もるんじゃないかな。明日は早起きして雪だるま作ろうよ」

「うん。作ろう」

紫央が目を細めて笑う。

なんだかその笑顔が大人びて見えて、雪が積もったら雪だるま作ろう、なんてはしゃいでいる自分が、ちょっと恥ずかしくなった。

でも、子どもっぽくてもいい。

紫央の前では、わたしはいちばん素の自分でいられた。

「どっちが上手くできるか勝負ね」

「じゃあ頑張らないとね」

明日の予定ができるのが嬉しい。

まだ紫央といられる。

こうやって1日ずつ明日の予定を決めていけば、ずっと一緒にいられるような気がした。

いつものように玄関まで見送ってくれた紫央に、いってきますを言う。

「転ばないように気をつけてね」

紫央が手を振りながら言った。

「転ばないよ」

わたしは笑って家を出た。

さらさらと細かな雪が降っている。

まるで空から粉砂糖をかけるみたいに、見慣れた景色がゆっくりと白に染まっていく。





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