たとえ9回生まれ変わっても




冬休み前の最終日。
明日は終業式だけなので、今日が今年最後の授業だ。

クリスマスムードに包まれて、朝から教室には浮かれた雰囲気が満ちていた。

「今日どこ行くの?」

「イルミネーション見に行くよ。そっちは?」

「いいね。うちらは家でパーティーかなあ」

井上さんと吉田さんは、学校のあとデートの約束があるらしい。

いいなあ、と思いながら、わたしは思いきって言ってみた。

「男の子って、何をもらったら嬉しいのかな」

2人が目を丸くしてわたしを見た。

……あれ。
ちょっと唐突すぎたかな。

『クリスマスってなんとなくわくわくするよね。ツリーとかプレゼントとか』

と紫央が言っていたのを思い出したのだ。

どうしてもっと早く思い出さなかったのだろう。

もっとゆっくり考えたかったけれど、もし渡す勇気を出せるとしたら、今日しかないと思った。

「それはもちろん、紫央くんに、だよね?」

「えっと……うん」

聞いておいて、わたしは急に恥ずかしくなって肩を縮めた。

ぷしゅう、と頭から音を立てて湯気が湧きそうなくらい顔が熱い。

「もしかして告白するの!?」

「絶対両思いだよー」

2人の勢いに押されて、わたしは違う違う、と首を振る。

「こ、告白はまだ無理だけど……でも、何かあげたいなって」


いまでさえこんな状態なのに、本人に告白なんてできるわけがない。

「うーん、マフラーとかどう?」

「あっ、いいね。毎日使えるし、渡しやすいよね」

マフラーかあ……。

わたしは紫央がマフラーを巻いているところを想像してみた。

紫央にはやっぱり青が似合うと思う。
鮮やかな青よりちょっと深めの青。

紫央がマフラーを首に巻いているところを想像すると、なんだかどきどきした。

「紫央くんならなんでも喜んでくれると思うけどね」

井上さんが笑って言う。

「うんうん、あんなに森川さんのこと大事に思ってるんだもん」

と吉田さんがうなずく。

大事に、思われているんだろうか。

そんな自信はまったく持てないけれど、喜んでくれたらいいな、と思う。

まだプレゼントを買ってもいないのに、わたしはもうそれを手にしたみたいに落ち着かない気持ちだった。



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