たとえ9回生まれ変わっても
◯
冬休み前の最終日。
明日は終業式だけなので、今日が今年最後の授業だ。
クリスマスムードに包まれて、朝から教室には浮かれた雰囲気が満ちていた。
「今日どこ行くの?」
「イルミネーション見に行くよ。そっちは?」
「いいね。うちらは家でパーティーかなあ」
井上さんと吉田さんは、学校のあとデートの約束があるらしい。
いいなあ、と思いながら、わたしは思いきって言ってみた。
「男の子って、何をもらったら嬉しいのかな」
2人が目を丸くしてわたしを見た。
……あれ。
ちょっと唐突すぎたかな。
『クリスマスってなんとなくわくわくするよね。ツリーとかプレゼントとか』
と紫央が言っていたのを思い出したのだ。
どうしてもっと早く思い出さなかったのだろう。
もっとゆっくり考えたかったけれど、もし渡す勇気を出せるとしたら、今日しかないと思った。
「それはもちろん、紫央くんに、だよね?」
「えっと……うん」
聞いておいて、わたしは急に恥ずかしくなって肩を縮めた。
ぷしゅう、と頭から音を立てて湯気が湧きそうなくらい顔が熱い。
「もしかして告白するの!?」
「絶対両思いだよー」
2人の勢いに押されて、わたしは違う違う、と首を振る。
「こ、告白はまだ無理だけど……でも、何かあげたいなって」
いまでさえこんな状態なのに、本人に告白なんてできるわけがない。
「うーん、マフラーとかどう?」
「あっ、いいね。毎日使えるし、渡しやすいよね」
マフラーかあ……。
わたしは紫央がマフラーを巻いているところを想像してみた。
紫央にはやっぱり青が似合うと思う。
鮮やかな青よりちょっと深めの青。
紫央がマフラーを首に巻いているところを想像すると、なんだかどきどきした。
「紫央くんならなんでも喜んでくれると思うけどね」
井上さんが笑って言う。
「うんうん、あんなに森川さんのこと大事に思ってるんだもん」
と吉田さんがうなずく。
大事に、思われているんだろうか。
そんな自信はまったく持てないけれど、喜んでくれたらいいな、と思う。
まだプレゼントを買ってもいないのに、わたしはもうそれを手にしたみたいに落ち着かない気持ちだった。