たとえ9回生まれ変わっても


「紫央!」

声を振り絞って名前を呼ぶ。

ねえ、どこにいるの。

返事をしてよ。

いつもみたいに笑って、帰ろうって言ってよ。

わたし、まだ、紫央に何も伝えられていないのにーー。


息がカラカラで声が出ないから、そんなに大きな声は出ない。

それでも、力いっぱい紫央の名前を呼び続けた。

寒さなんて、とっくに吹き飛んでいた。


ただ、紫央に会いたかった。


そのときだった。

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