たとえ9回生まれ変わっても


わたしが5歳のときに、シオはうちにやってきた。

お店の前をうろうろしていたシオを、お母さんがお腹を空かせてかわいそうだからと、家に招き入れたのだ。

忙しい両親に代わって、シオの世話はわたしの役目になった。
エサやりやトイレの掃除。
そのおかげか、シオはわたしにいちばん懐いていた。

遊ぶのも、寝るのも、いつも一緒だった。

人と付き合うのが苦手なわたしにとって、シオは唯一の友達だった。

10年間ずっと。
そしてこれからもーーそう思っていた。

でも、去年のクリスマス、シオは突然いなくなってしまった。

いつもなら夜に家を出ることなんてないのに、シオは夜中にこっそり家を抜け出した。

そして、それきり帰ってこなかった。


「なんとなく、ほっとけないのよ。だから蒼乃、あの子がうちにいる間は、仲良くしてあげてね」

……ずるい。

そんな風に言われたら、強く言えなくなる。

「あと、お父さんの腰が治るまで、紫央くんと2人で店番お願いね。昼間はわたしと紫央くんでなんとかするから」

大事な話のついでみたいに、お母さんはさらりと言った。

はあ、とわたしはため息を吐く。

「……お父さんがよくなるまでだからね」

「ありがとう蒼乃、そう言ってくれると思ってた!」

……なんだかこの調子で、ずっとお願いされそうな気がする。

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