たとえ9回生まれ変わっても
『今日はどうするの?』
『ヒミツー』
紫央とのやりとりを頭で反芻する。
なんだか、楽しそうだったな。
紫央みたいに気ままに、思ったことを素直に言って、やりたいことができたらいいのに。
紫央にだって事情があるのだろう。
そんなことを思うのは筋違いだってわかっているけれど、羨ましくなってしまう。
午前の授業が終わると、わたしはお弁当を持ってそっと教室を出た。
朝からの鈍い胃の痛みは、まだ続いていた。
ひと気のない薄暗い階段に座って黙々とお弁当を食べる。
高校に入ってから半年間、昼休憩はこの場所で過ごしている。賑やかな教室にいると、どうしたって息が詰まってしまうから。
お弁当を食べ終えて、予鈴が鳴る前に教室に戻った。
ああ、次は英語だ。
机から教科書を出そうとして、手が止まった。
また当てられるのだろうか。
名前を呼ばれて、できなくて詰られて、恥ずかしくて俯いて、それでもまたわたしはいつものように何も言えないのだ。
もし当たらなくても、いつくるかと1時間ずっとびくびくしていなければならないから、授業に集中なんてとてもできない。
……お腹が痛い。
朝よりもっとひどくなっている。
もう、嫌だ。
変わりたいのに、ずっと変わりたいと思っているのに、何も変われない。
目に涙が滲んだ。
締めつけるような痛みに耐えきれなくなって、机に頭を伏せた。