たとえ9回生まれ変わっても
「じゃあ、よろしくお願いします」
養護教諭の先生にぺこりと頭を下げて、吉田さんは教室に戻っていった。
「過度の緊張からくるストレスかしら」
養護教諭の先生は言った。
「春にも同じことがあったわよね?」
「……はい」
やっぱり、覚えられていた。
新しい学校。
新しい教室ーー。
クラスメイトに目の色のことを聞かれた。
たぶん、それほど興味もなかったなだと思う。ただの最初の挨拶程度の会話。
でもわたしは、うまく答えられなかったのを気にし過ぎて、お腹が痛くなって保健室に助けを求めたんだ。
緊張しすぎてお腹が痛くなるなんて情けない。
もっとうまくやれないのかと、自分を詰りたくなる。
「心配してたけど、いい友達ができたみたいね。安心したわ」
先生はふっと微笑んだ。
「友達……?」
友達でしょう? と先生は首をかしげた。
「彼女、すごく心配してたわよ。どうでもいい存在だったら、あんなに心配しないわよ」
そうだろうか。
それはちょっと違うと思う。
吉田さんが心配したり、黒岩先生の嫌がらせに怒ってくれるのは、吉田さんが優しいからだ。
友達とかそういうの以前の、彼女の人柄だと思う。
友達なんて、そんな風には思えない。
思いあがったりしたら、期待したぶん、落ち込むだけだ。