たとえ9回生まれ変わっても

だけど、入ったばかりの紫央1人じゃ追いつかないことは、考えなくてもわかる。

それくらい大変な仕事で、無理が積み重なって腰を悪くしてしまったのだということも。

だから、わたしにできることなら力になりたいという気持ちも、嘘じゃない。

でもわたしにできることなんてあるのだろうかって、自信のなさがやっぱり先に出てしまうのだ。

それから3人で、お母さんの車で病院に行った。

お父さんのベッドは、大部屋のいちばん奥だった。

声をかけてからカーテンを開けると、お父さんはガバッと体を起こした。

「おう、来てくれたか!」

「手術終わったばっかりなんだから寝てなさい!」

「へいへい」

お母さんに怒られて、お父さんは渋々ベッドに横になった。
1日中寝ていたから、顎の髭が少し伸びている。

「病院ってヒマなんだよなあ。動いてないと落ち着かないな、やっぱり」

「だったら、早く治してちょうだい。無理するとまたこういうことになるんだから」

「……へいへい」

一応、無理をしたことは反省しているみたいだ。


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