たとえ9回生まれ変わっても


……やっぱり「家族」には見えないよね。
お父さんともお母さんとも、全然違うから。

いままで何度も言われてきた言葉だ。

『どこの子?』

『全然似てないね』

悪意のない、見たままの感想だ。
目の色が違うだけで、人の印象はがらりと変わる。
わたしだって、自分のことじゃなければきっとそう思うだろう。

こんなの慣れているのに。
どうして些細なことで、わたしはいちいち傷ついてしまうんだろう。

「あら。お茶がないわね」

お母さんがトレーの上を見て言った。

「あの看護師さん、どうもうっかり屋なところがあるからなあ」

とお父さん。

2人とも、看護師さんの言葉なんて、全然気にしていないみたい。
気にしているのは、わたしだけだ。

「わたし、お茶とってくるよ」

「そう? じゃあお願いね」

逃げるように病室を出ると、当たり前のように紫央もついてきた。

後ろからとことこついてくる紫央を無視して、わたしは薄暗い廊下を歩いた。

廊下にはたくさんの病室が並んでいて、給湯室は階段の隣にあった。
薄暗い廊下に反して、目印のようにそこだけ蛍光灯の明かりが黄色く灯っている。


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