たとえ9回生まれ変わっても


「黒岩のやつ、碧眼美女に騙されてお金巻き上げられたとかで、外国人全般恨んでるらしいよ」

「何それ最低。完全に八つ当たりじゃん。ていうか碧眼美女とどこで出会うの」

「マッチングアプリでしょ」

「うわあ……引くわー」

「大人って卑怯だよね。生徒にはあれダメこれダメってうるさいくせにさあ。ねえ森川さん、そう思わない?」

「う、うん……」

わたしは苦笑しながら頷いた。

ボールが転がるみたいにポンポン弾む会話に、相槌を返すのがやっとだ。

そんな情報を、どこから仕入れてくるのかも不思議だ。

だけど尋ねる前に、話はもうべつのことに移っている。

会話ひとつでも、わたしは人よりテンポが遅い。

……それにしても、わたし、先生の恋愛事情の八つ当たりにされていたのか。
高校に入学してから半年間も。

くだらない。
くだらなさすぎて、本当に泣きたくなってくる。

そんな理由で、見た目のことを馬鹿にしないでほしい。
だけどそんな反抗的な態度をとれば、もっとひどいことを言われそうで、結局怖くて何も言えなくなってしまう。

それに、そういう風に言われるのは仕方ないって、どこかで諦めてもいた。

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