イジワルな君に、ラブレターを。
私が謝りかけたそのとき。
「……俺が悪いんです」
隣に立っていた純太が、先生に思いきり頭を下げた。
「俺が寝坊した上に、学校まで走ってる途中で転んでしまって。そこを通りかかった麻生さんが、わざわざ立ち止まって怪我の手当てをしてくれたんです」
さっきから何を言ってるの、純太。それは、全くの真逆だよ。
私は、自分の膝に貼られた絆創膏にそっと手を当てる。
さっき、ふたりで一緒に走り出してすぐに躓いて転んだのは私で。
そのあと、怪我の手当てをしてくれたのは純太じゃない。
私が転んだせいで、余計に学校に行くのが遅くなっちゃったんだよ。
それなのに、なんで純太は私をかばおうとしてくれるの?
あのとき、私を置いて先に行っててくれたら……。
純太だけでも、遅刻せずに済んだかもしれないのに。
「だから、若葉の遅刻は見逃してください」
「……河辺の言ってることは、本当なのか? 麻生」
原田先生が、私のほうに視線を移す。
「いえ、先生。違……っ」
「違わないです。遅れたのは、ほんと俺のせいなんです。すいませんでした」
純太が口を開いた私を手で制し、再度頭を下げる。
「分かった。河辺、ホームルームが終わったら職員室に来なさい」
「っ……はい」