ずっと探していた人は
「ねー、まずは何食べようか~」

無事当番が終わり、早速パンフレットを片手に由夢と教室を出る。

「なんかせっかくだし、文化祭っぽいもの食べたいよね。文化祭での定番の食べ物って何だっけ?」

「え、なんだろ、タコ焼き?」

定番というよりは自分の好きな食べ物を答えた私に、由夢も気づいたのか、「それは加恋の好きな食べ物でしょ」と笑う。

「けど、私たちにとってお祭りっていうと、タコ焼きじゃん?」

「まあそれは……一理あるな」

私の返しに納得した由夢が、「それじゃあタコ焼き食べるぞお!」と高らかに宣言する。

「あとは……そうだね、フランクフルトも食べたい」

「お、いいね。私はりんご飴食べたい、絶対」

「由夢、好きだねえ、りんご飴」

そういえば去年の文化祭でも、由夢と一緒にりんご飴、食べたな。

「加恋がタコ焼き好きなように、私はりんご飴が好きなの」

由夢が笑う。

「まあとりあえず、タコ焼き目指して歩こう」

お腹ぺこぺこだよ~と嘆く由夢と一緒に、歩き出す。

「おーい!」

由夢と同時に後ろを振り向くと、すっかりお化けの変装をといた中川くんが、駆け寄ってきた。

「どこか行くのか?」

「うん、今からタコ焼き食べに行く旅に出るの」

可愛らしく答えた由夢に「なんじゃそりゃ」と言いながら中川くんは軽蔑の目を向ける。

「まあいいや、俺も行こ、腹減ったし」

「大橋くんと徹は? いいの?」

「あー、いいの、いいの。『せっかく変装したんだから記念に』とか言って、2人でずっと自撮りしてんの」

くだらないし面倒だから放ってきた、と言い捨てるのが中川くんらしくて笑える。
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