LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
綾知さんが帰宅したのは、日付が変わる少し前。
「あれ、千花もしかして俺の事待ってたの?
風呂くらい入ってたらいいのに」
綾知さんはどこか陽気で、お酒の匂いがした。
「お義母さんが冷蔵庫にカレイの煮付けがあると言ってたけど、
どうする?」
時間も時間だし、お酒を呑んでるくらいだから、もう外で夕飯は済ませたのだろう。
「ご飯はいらないけど、煮付けだけ貰う。
自分でやるから、座ってて」
綾知さんは、冷蔵庫からそれを取り出しレンジで温める。
「どう?新しい暮らしは?」
その温めを待つ間、そう問いかけられるけど。
「うん。本当に広い家だよね。
それなりに楽しくやってる」
「そうか」
なんとなく、本当の事が言えなくて。
いや、言ってしまえば良かったかな?
けど、この人が本当の事を言って、私の味方になってくれるとは限らない。
お義母さんと一緒になって、私をいびるのを楽しみ出すかもしれない。
だって、この人は私が憎いし、先日、この人に酷い目に合わされたばかり。
信用できない。
綾知さんは、そのカレイの煮付けの皿を持ち、ダイニングテーブルの私の向かいに座る。
お酒のせいなのか疲れているのか、
そのだるそうな顔が、少し色っぽいな、と思ってしまった。
「なに、ジッと見て?」
そんな私の視線に、クスクスと笑っている。
なんで私が見ていたか、この人は分かっているんだ。
「けっこうお酒飲んだの?」
「まあ。
M社の接待だったんだけど。
疲れた」
そう欠伸をしている。
多分、取引先のM社にもてなされて来たのだろうけど、それが仕事だと疲れるのだろう。