LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「此処いいですか?」
そう言われ、顔を上げると、目の前に立っていたのは奥村さん。
「え、奥村さん…えっと。
なんで食堂に?」
「私も年に1~2回は、食堂使ってて。
普段は大体お弁当なんですけど」
「そうなんですね…」
特に話を広げる言葉も出ず。
急に現れた奥村さんに、緊張してしまっている。
奥村さんはそんな私の態度を特に気にせず、目の前に座る。
「どうです?眞山は優しいですか?」
そう訊かれて、どう答えていいか迷う。
綾知さんは、優しい所もあるけど、とても最低な人だ。
だから、大嫌いだと思うけど、その思いが揺らぐ時がある。
それは、優しくされた時で。
「正直、よく分からないです」
「そう」
クスクスと笑われた。
「そういえば、奥村さんには謝らないと」
「え、どうしてですか?」
「私、彼に2回、奥村さんの子供は綾知さんの子供じゃないのか、と言ってしまいました…。
いや、勿論、奥村さんから違うって聞いて分かっているのですけど。
でも、太陽君の写真を大切そうにスマホに保存していたり…。
太陽君のサッカーの試合観に行ったり…」
「気になりますか?」
そう、笑っていて。
いつかの時みたいに、嫌な気分にさせたわけではないみたい。
「気になっているのでしょうか?」
自分でも、よく分からない。
奥村さんは、そんな私に優しく微笑んでくれる。
「眞山とは、太陽が生まれる前から友人なのですが。
太陽が生まれて、その時から彼はとても太陽を可愛がってくれていて。
もしかしたら、息子みたいには思ってくれているのかもしれませんけど」
息子みたいには…。
それを聞いて、今まで考えなかったけど。
頭に浮かんでしまう。