レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
久しぶりに顔を合わせた父親は、子供の頃から変わらない。自分の感情だけ吐き散らして、相手の言葉はいらない人。
娘の結婚相手に愛人の1人、2人いてもどうでもいいのだろう。
私と母は、家内と一人娘というお飾りなのだから。もしかしたら、心配をして貰えるかもなんて、心のどこかで期待していたのかもしれない。
でも、私という存在も、ただの彼の地位の一部分に過ぎなかったらしい。
少しして、彼が病室にきた。
部屋は4人部屋でカーテンで仕切るタイプで、私の他に患者はいなかった。
「驚いたよ。大丈夫だった?」
小さな花束を持って、成央さんがいつものように穏やかに優しく笑うから。言葉に詰まる。
「看護師さんに聞いたよ。軽い脳しんとうだってね。MRIでも異常なかったから明日には退院できるって」
「……」
「良かったね」
彼女がどうなったかなんて聞けないけど。
良かった、なんてどの口が発言するのか。
なんで、この人は笑っていられるのだろう──?
「………こ、こわいです」
「ん?そうだよね。怖いよね。でも、もう大丈夫だよ」
ふわりと、頭に乗せられた大きくて柔らかい手。彼からあの薔薇の香りはしないけど、頭から足の指の先まで全身に鳥肌が立っていくのが分かる。