月の光
少し早めに行けたときは、彼女の練習を見学させてもらっていたけれど、何回見ても彼女の演技には目が釘着けになった。

技が成功したときの花が咲き乱れてるんじゃないかというような笑顔、転んだりジャンプが跳べなかったときのほっぺを膨らませて唇が少し尖っている顔、滑り出す瞬間深呼吸をすること…
彼女の表情や仕草に引き込まれていることに最近気づいた。

「恋だな。」
急に隣で声が聞こえて慌ててみるとコーチがニヤニヤしながらこっちを見ていた。

「何ですか。エスパーですか。」
ちょっと不機嫌に答えると、
「へー、やっぱり恋煩いかー」
と笑ってくる。ほんとに何なんだこのコーチ!

「あと、一週間だったよな」

「え?」

「君がアイスホッケー習いにこのリンクに来るの」

慌てて携帯のスケジュールを確認する。
一週間後にはMV撮影が入っていた。

「短いな…」

「でも上達早かったよね」
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