生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~
その日も、夜遅くローガンはレナの寝台に入り込んできた。
てっきりいつものように抱かれるのかと思ったが、ローガンはレナの身体を腕の中に閉じ込めるとすぐに眠ってしまった。
抱きしめられるだけの夜は初めてだった。
鼻に付く酒の匂いに、彼がかなり酔っていると気が付く。
規則正しい寝息を立てる腕の中で身をよじって隙間を開け、眠るローガンの顔を見上げれば鼻先と目元が酷く赤かった。
もしかしたら泣いていたのかもしれない。
手を伸ばし、レナはローガンの頭を撫でていた。
硬そうに見える髪は触れてみれば柔らかく、心地よい感触だった。本当に大きな獣を撫でているような気分になる。
苦しそうに皺を寄せた眉間に指を滑らせて何度か撫でれば、険しい表情が少しだけ緩んだ気がした。
「レナ……」
「っ……!」
眠っているはずなのに名前を呼ばれ、レナは自分の心臓が大きく跳ねるのを感じた。
淡い期待が頭をもたげる。もしかしたら、自分はただの囚人ではなくなりかけているのかもしれない、と。
身体を気に入ってくれているだけかもしれない。ほんの一時の遊びなのかもしれない。
それでもいいと思えるほどにローガンの腕の中はただ暖かかった。
レナの心が変ったからなのか、他の理由があるのか、ローガンはその夜からレナを手酷く抱くことはなくなった。
口汚く領主たちの横暴を暴き立て、居場所を問い詰める事も減った。
その代り、レナの理性をぐずぐずに溶かすような執拗で甘い行為を繰り返す。
まるで愛されていると錯覚するような行為の中で、レナはずっとこんな生活が続けばいいと思っていた。