生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~
王の命令で数日砦を空けると知らされたレナは、不安と心細さから初めて自らローガンの身体にすがりつく。
何も願うことも伝える事も出来ないレナに、宥めるような優しいくちづけが落された。
物言いたげなローガンの片目を見つめ、レナはその腕にもたれかかって別れを惜しんだ。
ローガンが不在になってもレナが部屋から出る事を許されたわけではなく、顔を合わせるのは世話を焼いてくれるメイドひとり。
だが、主が居ない気安さからか彼女はようやく口をきいてくれるようになり、しきりにレナの事を案じてくれた。
そしてどうか、ローガンを恨まないで上げてほしいと訴えた。
「将軍様もお可哀相な方なのです。彼もかつてあの領主が治める土地に住んでいた際、家族や大切なものを全て奪われたそうです。あの髪や片目も、本来ならば薬で治るような病だったのにろくな治療も受けられずあのような……必死に努力なさって今の地位を手入れられたのです。そして、あの領主に必ず報いることを目標にされていました」
「そう……なの」
ローガンの過去を知ったレナは、彼がなぜあそこまで自分を執拗に攻め立てたのかを理解できた気がした。
同じように虐げられる立場だったレナが、領主の傍でぬくぬくと生きてきた事が許せないのだ。
そんな思いを抱える彼に愛されるわけなどないと気が付いたことで、自分がローガンを深く愛し始めていた事を思い知らされた。
身体から始まったとはいえ、あそこまで誰かに必死に求められた事などなかったレナは、ローガンに心を奪われていたのだ。
(私が領主たちの事を知らないと言い続けていれば、その間はローガンさまの傍にいられる……?)
ほの暗い感情に苛まれながら、一人ローガンの帰りを待っていた。