生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~
「……では、彼女は本当に何も知らないと?」
報告書を読むローガンの表情は蒼白だった。
ずっとその首を狙っていた領主一族をようやく狩れると思って来てみれば、残されていたのは養女であるレナひとり。
ローガンの最後の記憶よりずっと美しく成長した彼女の姿を目に入れた瞬間込み上げたのは、抑えきれないほどの恋慕と怒りだった。
レナは覚えていないのかもしれないが、ローガンはかつてレナと共に孤児院にいたみなしごだった。
かつては別の名前をしており、身体も小さく弱々しかった自分をいつも支えてくれていたのがレナだ。
年下だと言うのに妙にしっかりとしたレナの心の強さに惹かれていた。いつか大人になったら一緒に生きたいとさえ思っていた。
だが、レナは領主の養女になって去って行ってしまった。
贅沢な暮らしができると喜んでいたと大人たちは教えてくれた。
それからすぐに領主は孤児院への援助を打ち切り、ローガンたちは飢えと寒さに苦しみながら散り散りになることを余儀なくされた。
苦しい生活だった。生きていられたことが不思議なほどの日々。
自分からレナを奪った領主を、自分を捨てたレナをローガンは恨んだ。
必ず復讐してやるという気持ちで病を退け死の淵から戻った。
髪の色と片目を失がったが、そんな事は何でもないと、必死に這い上がることを選んだ。
過去や名を捨て、血を吐くような努力をして今の地位を手に入れた。
同時に、復讐心を忘れずに領主たちの情報を集め付付けていた。
養女となったレナは表舞台に姿を見せる事はなかったが、領主が拾ってきた美しい娘の噂は嫌でも手に入った。
ありとあらゆる贅沢を謳歌し、その美しさで男どもをはべらせ、いずれは王家に縁付こうと考えている毒婦。
そんな女になり果てたレナをローガンは心から憎んだ。