俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
「あの、会食っていったいなにをするんでしょう?」
「くだらない嫌味をいい合いながら飯を食うだけだ」
「な、なんですかそれ」
聞いただけでぞっとした。先生はそんな私の傍らで、悩ましげに頭を抱えていた。
◇◇◇
不安を抱えたまま当日を迎えた。私は先生に連れられある老舗料亭の前に立っていた。
昨夜調べたところによると、ここは大物政治家や、著名人の御用達の場所らしい。立ち並ぶ黒塀。その前に列をなす黒塗りに高級車。どれをとっても庶民の私には、縁遠い物。
こんな場所を貸し切りにできるとは、日比谷一族のすごさを改めて知る。そんな一族のご子息は、朝から憂鬱そうな様子。だがきちんと正装していて、ブランドのスーツが決まっている。今朝家に迎えに来てくれた時、玄関に立つ彼を見て思わずかっこいい、と口からこぼれてしまったくらい。
しかも初めて車に乗せてもらったが、その仕草や動作、なにもかも素敵で、目が離せなかった。こんな素敵な人が私の恋人だなんて、いまだに信じられない。
「行こうか」
ぶっきらぼうに言うと、私を門の中へ促す。
「はい。行きましょうか」
いいながら一歩踏み出す。