石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~

 昨夜、突然父親から呼び出され、告げられたのはルルティアナの結婚相手が決まったとの知らせだった。

 相手は父親よりも年上。大きな商会を取りまとめる金持ちで、前の妻を亡くして一人さみしく過ごしているので世話を焼く妻が欲しいのだと言う。



『これはもう決まった事だ。あちらは働き者の若い娘と聞いて喜んでいる。支度も持参金も必要ない。金は全てあちらが用意してくれるから、その身一つで行けばいい』



 父親の後ろで笑う義母とメルリアの表情は、意地悪く歪んでいた。

 ルルティアナは自分が売られたのだということに気が付き、何も言えず逃げるように自室に戻った。

 いずれこんな日が来るとは思っていたが、あまりに残酷だった。

 結局、父親にとっての真実の家族は義母と異母妹だけ。

 はらはらと無言のままに涙を流しながら、ルルティアナは自らの身の上を嘆いたのだった。



 今日の夜には迎えが来ると言われ、ルルティアナは何事かを叫ぶメルリアを振り切るようにして森に来ていた。

 どうして、でも別れを告げたかった。



 嫁いでしまえばここに来ることはできないだろう。

 この十年、辛くともなんとか心を壊さず生きてこられたのは、この物言わぬ石像があったからだ。

 母が語り聞かせてくれた英雄の姿をしたこの石像は、ルルティアナにとって幸せの象徴。

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