石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~
「え……!?」
突然聞きなれぬ声がしてルルティアナは動きを止めた。
驚いて顔を上げれば、先程までしがみついていた筈の石像が、何故か動きだしていた。
だらりと下がっていた腕が持ち上がり、ルルティアナの身体をしっかりと抱きしめる。
「な、なに……!?」
「ああ。なんと柔らかく温かな身体か。ずっと君に触れたかった。美しく育っていく君をこの腕に抱きしめ、存在を確かめたかった」
「い、いやぁっ!!??」
恐怖で混乱したルルティアナは自分を抱きしめてくる腕から逃げようともがくが、既に石像ではなくなった太くたくましい男の腕はそれを許さない。
それどころか、大きな掌が身体をまさぐるように動き回りはじめ、ルルティアナは悲鳴を上げた。
だが、腕の持ち主はそんなことお構いなしに抱きしめる力を増してくる。
「ルル、ルル。俺のルルティアナ」
「どうして私の名を…!!?あなたは一体誰です!!?」
「酷いな。何度も俺の名を呼んでくれたではないか。俺は君の英雄、バルト・トレシーだよ?」
「なっ……!!」
すっかり生身の人間になっている石像が優雅な微笑を浮かべていた。黒曜石の瞳が美しく煌めいている。
それは間違いなくバルト・トレシーその人で、ルルティアナは一体どういうことなのか目を白黒させたのだった。