石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~

「嘘のようだが俺は本当にバルト・トレシーさ。君の愛する英雄だよ、可愛いルル」



 バルトはルルティアナを抱く腕に力を込め、鼻先を首筋にうずめてくる。



「きゃっ、やっ……!?」

「何と優しく甘い匂いか。最初に触れたものが君であると言う喜びをどう伝えればいい」

「いやぁ! 離して、離してくださいっ!!」

「あんなに熱烈なくちづけで私を目覚めさせておいてどうして嫌がるんだい?」



 首の付け根をくすぐるバルトの暖かな吐息にルルティアナは背中を震わせる。

 彼の手が怪しく動き始めたのを感じ、慌てて身をよじって逃げようと試みるが、今度は背中から抱きしめられる体勢になってしまい、ますます逃げられない。

 片腕で腰を抱え込こまれ、片方の手は不埒にもルルティアナの胸の上を撫でまわしてくる。

 うなじにぴったりと押し付けられている彼の頬は、焼けるように熱かった。



「なんで、なんで……!!」

「私が黒竜に掛けられた呪いは『愛する乙女からの口付け』で解けるものだったのだよ」

「……!!」



 肌に囁き込まれるように紡がれるバルトの言葉は蕩けるような甘さを帯びており、ルルティアナは喉を鳴らす。



「君が私を見つけたあの日は奇しくも、転移魔法であそこにたどりついた日だったんだ。石像の私を見つけた者は、無関心を貫くか、金にならないかと考える下劣な者かのどちらかだった。だが、君は汚れた私を気遣い、英雄だと大切にしてくれた。君の優しさと献身に私はすっかりやられてしまった。君の美しさに俺は恋をしていた」

「……!!」

「君が来ない日はどうにかなってしまいそうなほどに寂しかった。君が帰っていくのを見送る辛さは言葉にできない。少しでも君の身体が楽で安全にあるように魔法をかけ、山の恵みを君に与える程度のまじないしか使えず、口惜しかったよ」

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