石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~
その告白にルルティアナは目を見開く。
石像に会った帰り、不思議なほど色々なものを得る事が出来たのはバルトの魔法だったのだ。
ここに来ると不思議と心と体が軽くなったのは気のせいではなかった。
「君が辛く苦しんでいると聞いて、助けられない不甲斐なさを呪ったさ」
「トレシー様……」
「バルト、と。君が結婚させられると知った俺が冷静でいられると? 君が口づけてくれなければ、この身体が砕ける事になったとしても、君を助けに行っただろうね」
「バルト様……」
これは都合の良い夢なのだろうかと、ルルティアナはぼんやりとバルトから与えられる言葉と甘い熱に身を委ねていた。
首筋に触れているのは頬ではなく、バルトの濡れた舌だ。胸を撫でていただけの手のひらは、ささやかなふくらみを優しく包むような動きになっていた。
与えられる刺激と優しい声音がまるで薬のように思考を奪って行き、ルルティアナはくったりとバルトの腕にもたれかかる。
「愛しいルル……ああ、今すぐ君を俺のものにしてしまいたい……だが、駄目だ。君の憂いを全て払ってあげなくては……」
「う、れい?」
なすがままに身体をまさぐられていたルルティアナは、バルトの言葉に鋭さが混じった気がして、沈みかけていた意識を浮上させた。
「そうだ。君を苦しめつづけ、俺から君を奪おうとした連中をまずは消しておこう。可愛いルル、ここで待っているんだよ」
消す、という単語にルルティアナは目を見開き、バルトの腕から逃げるようにもがいた。
だがその抵抗はあっというまに意味をなくす。
先程まで自分を抱きしめていたバルトそのものがその場から姿を消したのだ。
一瞬、夢だったのかと呆然としたルルティアナだったが、先程までそこにあった筈の石像がすっかり消えている事と、なぶられて熱を持っていた己の身体から先程のことが現実だと思い知る。
「……帰らないと……!!!」
バルトの言葉の意味を正しく受け取るならば、向かった先は一つしか考えられない。