私の愛は···幻

🎹告白


おばあさまの邸宅に帰り
少し休むように言われて
アルがベッドに運んでくれた。

情けない事に
ベッドに横になると
そのまま、寝てしまっていた。

目を覚ました時
私の右手は、アルに握られ
アルは、ベッドに頭を置いて
寝ていた。

ずっと、私についていて
くれたのだろうか?
アル、ピアノは?

と、思っていると·····

アルが顔を上げて
私と目が合うと 
にっこり笑って
『天音、きいて。』
と、言うアルに思わず頷くと
『俺は、天音、君に出会ってから
ずっと、君が好きだった。

でも、ヘタレな俺は
告白をして、天音に断られたら
天音と、もう一緒にいれなくなると
それを恐れて、ずっと、ずっと
自分の気持ちを隠してきた。

天音が、結婚したと
温斗にきいて······
気が狂いそうだった。
早く告白すれば良かった。
そう、思う自分が情けなくて
腹立たしくて、苛立って。

だけど、今も何ら変わらない。

俺は、天音が好き。
天音を愛してる。
俺を見てくれないか?
まだ、傷ついている天音を
混乱させたくないけど。
今、言わないと。
もう、後悔も嘆きも嫌なんだ。
だから、俺を見て。』
と、いきなり言われて驚いた。

あの世界で有名なピアニストの
アルフレッド・ブレンデルが
私のことをずっと······

私にとって、温斗は従兄弟で
ちょっぴり意地悪で、
でも本当はとても優しい。

アルは·······

ピアノが上手で、私の見本で·····
優しくて······優しくて······
私を大切に······大事に······
してくれて·····いた·······
そう······いつも······
私は、それが·····すごく·····
嬉し·····かった······

ああ·····なぜ······
気づかな······かったの·····だろう······

私は·····

最も大切で、大事な人を
見失っているから
幻みたいな、
恋愛を信じて裏切られるんだ。
バカだ····私は。

『ごめん。嫌だったよね。』
と、私が考え事をしていたのを
アルは、悪い方に取っていて·····

『ちっ、違うの。
温斗もとても大切だけど
アルが大切で、大事で
いつも一緒にいたのに。
一緒にいたからこそ
気づかなかったのか·····

私も、私もね、アルが好き。

幻みたいな恋でなくて
本物のアルフレッドが好き。

ごめんね、初めからわかっていた
事なのに。
今になって気づくなんて。』
と、言うと
『本当?本当に?
< アル、冗談だよ >って言っても
無理だからね。わかってる?天音。』
『うふふっ。
そんな事ないよ。絶対に。
でも、アルは良いの?
私は離婚歴があるんだよ。』
『関係ない。
俺が意気地がなかったから、だから。
天音のせいじゃない。
じゃ、じゃね、天音
結婚して、直ぐに。良い?』
と、焦りながら言うアルに。
『宜しくお願い致します。』
と、言うとぐっと抱きしめられた。

ちょっと、苦しかったけど
アルの好きなようにさせた。
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