離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
9.私たちは一緒に生きていく



瑛理が怪我をしたと聞いたのは午後の仕事中だった。

誠さんから直接スマホに連絡があり、休憩時に確認した。命に関わる怪我ではなく、緊急性はないそうだ。さらに本人が疲労からかすっかり眠り込んでいるため、私は定時後に病院に行くと伝えた。

しかし、それから定時までの時間はそわそわと落ち着かない時間だった。
仕事に集中しなくてはならないと思いつつ、瑛理の怪我の具合が気になって仕方ない。骨折したと聞いている。どうしてそんなことになったのだろう。今後の治療や勤務はどうするだろう。私にできることはなんだろう。頭の中を様々なことが駆け巡る。

定時ぴったりで退勤し、急いで都内の病院へ向かった。
瑛理がまだ目覚めていないことに不安を覚えつつ、医師から話を聞いた。瑛理は段ボールの下敷きになったそうだ。重たい段ボールに頭をぶつけていて、転倒したときに左足首を剥離骨折しているという。念のため今夜は入院で、ひとりなら家族の付き添いもOKということだった。

診察室を出ると、瑛理の同僚と部下に謝られた。瑛理は部下の男性をかばって怪我をしたらしい。
瑛理が判断してやったのだ。私が怒りを表明したりするものではない。私はふたりに丁寧に頭を下げて、病室へ向かった。
誠さんがいて、瑛理は目覚めていた。その顔を見てほっとしたのもつかの間。

「悪いけど、ひとりにしてくれ」

沈鬱な表情で瑛理は言った。
瑛理はひどく傷ついているようだった。それは肉体的な面ではなく、心の方だというのは見るからに感じられた。
詳細は不明だし、本人が話してくれるかもわからない。
< 138 / 166 >

この作品をシェア

pagetop