OL 万千湖さんのささやかなる野望



 廊下を歩きながら、

 読めるかな? 読めないかな?
 まあ、とりあえず、渡したし、と思っていると、雁夜が向こうからやってきた。

 駿佑と違い、いつも感じのいい雁夜が笑顔で言ってくる。

「さっきはありがとう。
 助かったよ、白雪さん。

 お弁当箱洗って、冷蔵庫の上に置いておいたから。
 今度なにかお礼するね」

「あ、いえ、手抜きのお弁当ですみません」

 そのとき万千湖は、雁夜の後ろから、こちらを見てヒソヒソ言っている女性社員たちがいることに気がついた。

 うっ。
 雁夜課長、人がいいから気づかなさそうだけど。

 あなたに、こんな人目のある場所で、ありがとうと言われるのは、向かいのビルからライフルで狙われているくらいの危険度ですっ。

 じゃあ、と言う雁夜に頭を下げたとき、案の定、給湯室に向かっていく彼女らが見えた。



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