OL 万千湖さんのささやかなる野望
「この家で最後ですね」
集落の端にある赤いお屋根の洋風なおうちの庭はとても広く。
ちっちゃい子が遊ぶような木の遊具がたくさん置かれていた。
「いいですね、こういうの」
と万千湖は微笑む。
庭でキャンプもできそうだし。
土地が広いっていいな、と改めて思った。
そのとき、スクーターがやってくる音がした。
グリーンメタリックのカマキリみたいな顔つきのスクーターだった。
庭先にそれをつけると、クーラーバッグを抱えた若い男が降りてくる。
彼は、玄関に行こうとしていた万千湖たちにぺこりと頭を下げたあとで、ドアを開け、
「じいちゃん、外、お客さんいるよ~」
と家の人に声をかけてくれた。
「魚、ぼちぼち釣れ……」
そう言いかけた彼は、ハッとなにかに気づいたように、こちらに戻ってくる。
深く被っていた黒いヘルメットを跳ね上げ、万千湖たちの顔を見た。
「やっぱり! あのときの埠頭のっ」