OL 万千湖さんのささやかなる野望
 


 ご近所には、狸でもイタチでもなく、お巡りさんがいました……。

 いや、あそこに住んでいるわけではなく、おじいさんの家があるので、たまに訪ねてくるだけのようなのですが。

「遅かったわね、あんたたち」

 万千湖が料亭の襖を開けると、すぐ側に座っていた美雪がそう言い、振り返った。

「なにそれ」
と息子たちを見上げる。

 駿佑と万千湖の手には、ビニール袋に入った大きなブリとイカがあった。

「……大根もあるんで」
と駿佑が言ったとき、彼の手にあるビニール袋が少しずれて、ブリが落ちかかる。

 頭の上でブリにビチビチッと動かれたかのように、美雪が、ぎゃっと逃げ惑った。

 まあ、締めてあったので、動くわけはないのだが。

 ちょっと気持ちはわかる……と万千湖は美雪の高そうなスーツを見て苦笑いした。





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