OL 万千湖さんのささやかなる野望
数十分後、万千湖たちは山の中の公園にいた。
凍えるように寒い夜の公園。
近くに子どもたちが遊べる大掛かりな遊具がたくさんあるので、昼間は賑わっているのだろうが。
夜景が見えるわけでもないので、今は誰もいない。
まあ、今、子どもがいたらいたで、それは生きてはいない人な気がするしな……と思いながら、万千湖は広い公園の中、駿佑の後をついて歩く。
隅に小さなステージがあった。
ここでイベントなんかがあるのだろう。
懐かしいな、と万千湖は眺めた。
よくみんなで、こんなステージに立っていた、と仲間たちの幻をそこに見て目を細めたとき、駿佑が万千湖を見つめ、言ってきた。
「ここで歌ってくれ、白雪。
いや、マチカ。
俺一人のために歌ってくれ」
それが指輪代だ、と駿佑は言う。
「えっ?
でも、私のギャラなんて、そんなによくないですよ?」
一回のステージであの指輪代をもらえるなんて、人気の演歌歌手くらいでは……?
そう万千湖は思ったが、駿佑は、
「いいから、歌え」
と言うと、ステージ前にある冷たい石のベンチのひとつに腰かけてしまう。