OL 万千湖さんのささやかなる野望
 万千湖は戸惑いながらもステージに上がる。

「な、なにを歌いしましょうか?
 あっ、私の曲なんてそんなに知らないですよね?」

 だが、駿佑はかなり迷ったあとで、
「何曲までオッケーだ?」
と訊いてきた。

「え、えーと……
 何曲でも」
と万千湖は答える。

「じゃあ、最初は『涙のショコラティエ』で。
 次も手堅い曲がいいな、『マイスター』にしようか。

 ここらで雰囲気を和ませるために『商店街サバイバル』。

 そのあと、ちょっとバラードが欲しいから、『アロマ・デイズ』で」

 いや、客はひとりなんで。

 ライブ風の構成にしなくても。

 あなた黒岩さんですか……と苦笑いしながらも、万千湖はその順番で歌った。

 駿佑は黙って聴いている。
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