嘘よりも真実よりも
 うつむく私の背中にそっと手を添えて、清貴さんは尋ねるように言う。その声は憂えていて、飯沼さんと別れなきゃよかったんだと言われてるようにも聞こえた。

 飯沼さんは私のこと、全部知ってる。それでも、私と付き合いたいと言ってくれた人だった。

「……はい。総司さんには、いつか、真実を話すつもりで……」
「そういうことだからさ、ふたりの問題に口をはさまないでほしい」
「私は、金城さんのためを思って……」

 感情をたかぶらせまいとこらえる彩香さんの唇は、わずかに震えていた。

「っていう名目で、みちるから別れを切り出すように説得しに来たんだろ? お姉さんをだまして結婚した直己さんを許せない? だから、みちるも憎らしい? 違うよな、ただ金城さんがほしくてたまらないだけだろう」
「いけないですか」
「いけなくはないよ。ただ、やり方が気に入らない。人には事情ってもんがあるんだ。事情ってやつがさ」

 私をかばう清貴さんの横顔は、疲れ切ってるみたいだった。

 いつもそうだった。
 私はずっと、富山家のお荷物だった。

 総司さんに出会って、もしかしたら幸せになれるかもしれないなんて思った私は、やっぱり総司さんのお荷物だった。

 私に関わった男性はみんな、疲弊していくみたいで、つらかった。

「話します……、私。総司さんに真実を全部話します。椎名さん、ありがとうございました」

 総司さんには、明日会う。
 約束した。明日の11時に会おうと。

 深々と頭を下げたら、テーブルが揺れて、走り去る足音が聞こえた。
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