嘘よりも真実よりも
声をかけるけど、反応がなくて、あわてて玄関を飛び出し、門を開いた。女性はまだインターホンの下にしゃがみ込んでいた。
「あの……大丈夫ですか?」
「すみません。胸が苦しくなってしまって……」
女性は胸元に手を当てると、塀に手をつきながら立ち上がり、私に視線を移す。
ハッとするほど、綺麗な人だった。
チェスターコートを羽織る肩は華奢で、色白で目が大きく、まるで、お人形のようだった。
「久我、みちるさんですか?」
「……はい、そうですが」
うなずくと、彼女は少しばかり申し訳なさそうに目を伏せた。
「私、椎名さゆみと言います。昨日は妹の彩香が大変失礼な態度を取ったと聞きまして、お詫びにうかがいました」
「椎名……」
胸がどくんっと大きく跳ねた。
四乃森直己の妻を目の当たりにして、動揺してしまった。私とそれほど歳の変わらない彼女が、父に愛されて結婚した。
私も母も得られなかった幸福を、この人は手にしたんだと思って。
胸の中に浮かぶ黒い感情が湧き上がるのを感じて、彼女から目をそらした。
これは、嫉妬だろう。
私は、久我直己に愛されたかった。
ずっと隠してきた思いから、逃げ出したくなった。
「彩香にはきつく言い聞かせておきました。もう二度と、みちるさんにはご迷惑おかけしません。本当に申し訳ありませんでした」
両手を重ねて、深々と頭を下げるさゆみに目を戻す。いつまで経っても顔を上げないから、彼女の肩に手を伸ばしかけた時、一台の白い高級車がスーッと目の前を通り過ぎていった。
高級車はゆるゆると走り、斜め向かいの家の前で停まる。
見慣れない車だった。
なんだろう。妙な胸騒ぎがした。
「あの……大丈夫ですか?」
「すみません。胸が苦しくなってしまって……」
女性は胸元に手を当てると、塀に手をつきながら立ち上がり、私に視線を移す。
ハッとするほど、綺麗な人だった。
チェスターコートを羽織る肩は華奢で、色白で目が大きく、まるで、お人形のようだった。
「久我、みちるさんですか?」
「……はい、そうですが」
うなずくと、彼女は少しばかり申し訳なさそうに目を伏せた。
「私、椎名さゆみと言います。昨日は妹の彩香が大変失礼な態度を取ったと聞きまして、お詫びにうかがいました」
「椎名……」
胸がどくんっと大きく跳ねた。
四乃森直己の妻を目の当たりにして、動揺してしまった。私とそれほど歳の変わらない彼女が、父に愛されて結婚した。
私も母も得られなかった幸福を、この人は手にしたんだと思って。
胸の中に浮かぶ黒い感情が湧き上がるのを感じて、彼女から目をそらした。
これは、嫉妬だろう。
私は、久我直己に愛されたかった。
ずっと隠してきた思いから、逃げ出したくなった。
「彩香にはきつく言い聞かせておきました。もう二度と、みちるさんにはご迷惑おかけしません。本当に申し訳ありませんでした」
両手を重ねて、深々と頭を下げるさゆみに目を戻す。いつまで経っても顔を上げないから、彼女の肩に手を伸ばしかけた時、一台の白い高級車がスーッと目の前を通り過ぎていった。
高級車はゆるゆると走り、斜め向かいの家の前で停まる。
見慣れない車だった。
なんだろう。妙な胸騒ぎがした。