嘘よりも真実よりも
*
実際会ってみると、四乃森直己は年相応の落ち着いた男だった。芸能界というきらびやかな世界に身を投じているようには見えない、ひかえめで、物静かな紳士といったところか。
目元はみちるによく似ている。彼らが親子なのは、まず間違いないだろうと思った。
「富山清貴です、はじめまして」
清貴はそう挨拶した。意外だった。彼らは初対面らしい。
「彼はライターの飯沼です。同席させていただきますが、よろしいでしょうか」
紹介された俺は、あらかじめ渡されていた名刺を、直己に差し出す。
「飯沼基紀と言います。よろしくお願いします」
直己は名刺を受け取り、ゆっくりと俺を見上げた。ぞくりとする。やはり、第一線で活躍する俳優なだけあるのか、その眼力には揺るぎない力強さがある。
「飯沼さんは……存じ上げていますよ。いつだったかな、深夜ドラマをたまたま見たんです。その脚本が飯沼基紀さんでした。面白かったですよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
聞いてない情報が出てきた。頭を下げつつ、清貴に目くばせする。彼はにやにやしながら、直己に答える。
「飯沼は、脚本の仕事は向かないってやめたんですよ。今は雑誌のライターが主です」
「それは残念だな。本当に面白かったのに。……ああ、どうぞ、座って。清貴くん……と呼んでいいかな。清貴くんは富山さんの次男の? あまり、富山さんのお宅のことは知らないようにしていてね、詳しくなくて申し訳ない」
俺たちは直己の向かいに並んで座った。
ここはホテル内にあるレストランの個室。三人分のコーヒーだけ注文すると、すぐに運ばれてきた。
「かまいませんよ。兄の仁志はうわさ話に興味がないですが、俺はそれでメシ食ってます」
「またまた。清貴くんの担当してる六花社のビジネス雑誌、早速拝読したよ。なかなか興味深い記事が多くて面白かったよ」
実際会ってみると、四乃森直己は年相応の落ち着いた男だった。芸能界というきらびやかな世界に身を投じているようには見えない、ひかえめで、物静かな紳士といったところか。
目元はみちるによく似ている。彼らが親子なのは、まず間違いないだろうと思った。
「富山清貴です、はじめまして」
清貴はそう挨拶した。意外だった。彼らは初対面らしい。
「彼はライターの飯沼です。同席させていただきますが、よろしいでしょうか」
紹介された俺は、あらかじめ渡されていた名刺を、直己に差し出す。
「飯沼基紀と言います。よろしくお願いします」
直己は名刺を受け取り、ゆっくりと俺を見上げた。ぞくりとする。やはり、第一線で活躍する俳優なだけあるのか、その眼力には揺るぎない力強さがある。
「飯沼さんは……存じ上げていますよ。いつだったかな、深夜ドラマをたまたま見たんです。その脚本が飯沼基紀さんでした。面白かったですよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
聞いてない情報が出てきた。頭を下げつつ、清貴に目くばせする。彼はにやにやしながら、直己に答える。
「飯沼は、脚本の仕事は向かないってやめたんですよ。今は雑誌のライターが主です」
「それは残念だな。本当に面白かったのに。……ああ、どうぞ、座って。清貴くん……と呼んでいいかな。清貴くんは富山さんの次男の? あまり、富山さんのお宅のことは知らないようにしていてね、詳しくなくて申し訳ない」
俺たちは直己の向かいに並んで座った。
ここはホテル内にあるレストランの個室。三人分のコーヒーだけ注文すると、すぐに運ばれてきた。
「かまいませんよ。兄の仁志はうわさ話に興味がないですが、俺はそれでメシ食ってます」
「またまた。清貴くんの担当してる六花社のビジネス雑誌、早速拝読したよ。なかなか興味深い記事が多くて面白かったよ」