嘘よりも真実よりも
『まず、私の娘に関してですが、報道にあります通り、30年近く前の話になります。結婚には至りませんでしたが、当時交際していた女性との間に、娘が生まれました。これは、事実です。そして、妻も承知しております』
『奥さまはなんと?』

 記者がすかさず質問を飛ばす。

『妻は、理解してくれていますとだけ、お答えします。そして、一部報じられました私の娘とされる女性についてですが、これはまったくの事実無根であります。本日会見を開きましたのも、その女性に、取材等、大変なご迷惑をかけてしまっている事実があり、黙認するわけにはいかなかったからです』
『事実無根ってどういうことですか? 娘とはお認めにならないってことですかっ』

 総司さんの手をぎゅっと握り返す。

 やっぱり、そうだ。父は私を娘とは認めない。久我の名前だけ与えて、私に会いに来なかった父に、何か期待でもしていただろうか、私は。

『認める認めないの話ではありません。報道の女性は、私の娘ではありません。私の実の娘は、7年前に亡くなりました』

 会場がざわつく。しかし、父の表情はまったく変わらない。

『事情があって、娘とは離れて暮らしていましたが、彼女の成長は、成人する20歳まで見守りました。その後、亡くなりましたので、公にすることもなくやってきました。今うわさされている女性はまったくの赤の他人です。ですので、これ以上の取材はご遠慮くださいますよう、お願い申し上げます』
『亡くなられてるって本当ですかっ?』
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