嘘よりも真実よりも
「みちる、来週の土曜日なんだけどね」
「土曜日ですか?」

 食パンに包丁を入れる手を止めて、首を傾げる。

「そう、土曜日。予定ある?」

 そう尋ねられて思い出すのは、総司さんのことだった。

 来週の土曜日、昨日と同じ時間に同じ場所で、私を待ってると言っていた。

 総司さんはひとめぼれしたと言ってくれた。私はまだ彼のことを何も知らなくて、会いたいような気もすると思ったけれど、首を横にふる。

「……ないです」

 総司さんは会ってはいけない人だった。
 好きになっても、すぐに忘れなきゃいけなくなる人だから、恋愛対象にしたらいけなかった。

「じゃあ、レストランで食事しないか? たまにはいいだろう?」
「仁志さんとふたりで?」
「ふたりでは不服?」
「あ、いいえ」

 パーティーに誘われた時も感じたけれど、どういう風の吹き回しだろう。仁志さんはいつも忙しくしていて、私に関心の目を向けるなんて全然なかったのに。

「それならいいね。まだレストランは決めてないから、みちるの行きたいところがあれば、予約するよ」
「私が決めてもいいんですか?」
「いいよ。決まったら、教えてくれ」

 そう言うと、仁志さんはテーブルにつき、香りを楽しむようにコーヒーカップを寄せて、目を細めた。
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