嘘よりも真実よりも
一番眺めのいい席にご案内します、と言われて案内された席からは、都内が一望できた。
夜空とビルの間を彩る神秘的なグラデーションの光に、思わず目を奪われた。こんなに素敵な夜景を見られる場所が身近にあったなんて、知らなかった。
「この席が一番おすすめだから、予約取れてよかったよ」
「仁志さんは以前にもこちらへ?」
彼はゆっくりうなずく。
仁志さんはきっと、私の知らない世界を何十倍も何百倍も知っていて、私が望む以上のものを提供できる人だろう。
「仁志さんが行ったことのないお店にしたらよかったですね」
「いいんだよ、そんなこと。でもそうだな、次があるなら、俺が選ぼう」
「お忙しいですよね」
ふたりきりで食事に来るひまなんてそうそうないだろうと思って言うと、的外れだったのか、彼は愉快そうに肩を揺らして笑った。
程なくして、お通しが運ばれてきた。上品なあわびの餡かけは、洋風に盛り付けられている。味も見た目も楽しめる、贅沢な洋風懐石料理といううわさは本当のようだった。
「一度ね、ゆっくりみちると話したいなって思ってたんだよ」
「はい」
料理に見惚れていると、穏やかに仁志さんが切り出す。背筋が伸びる。彼の父である富山豊彦といるようだった。
穏やかで凛とした豊彦は、私が困っている時に限って声をかけてくれる人だった。言葉数は少ないけれど、優しさを感じられる偉大さに、何度助けられただろう。
「万里さんが亡くなられて、もうすぐ20年になるね。いろいろと、節目の年なのかなと思ったりしてるよ」
いろいろと、という言葉に含みを感じる。黙っていると、仁志さんは頼りなく眉を下げた。
「いつか、父親がみちるを迎えに来てくれると思ってた。違ったようだね」