嘘よりも真実よりも
「じゃあ、こう言ったらいいかな。みちるがあまりにも綺麗で、好きになった。妹のように感じたことは一度もなかったからね、好きになるのに抵抗はなかったよ」
「好き……」

 思いがけない言葉を聞いて、ますます背筋が伸びた。

 仁志さんに望まれるということは、神聖な儀式のようだった。私に選択肢なんてないのだろう。欲しいと言われたら、捧げるのは当然なんだって、心のどこかで感じているのかもしれない。

「考えてくれないかな」
「……突然で、びっくりしてます」
「兄のように感じてるなら、難しいのかなとは思ってるよ」

 彼の見せた譲歩に、どこかホッとした。私が思ってるより、彼は私の立場を理解してくれてる。

「仁志さんをそういう風に考えたことはなかったので、戸惑ってます」
「みちるの心が決まるまで待つよ。だけど、待つだけでは俺の気持ちが済まない。またこうして、ふたりで会ってくれるかな」
「……はい。わかりました」

 なんて返事したらいいかわからなかったけど、無理だなんて拒めるはずない。私から仁志さんを断るなんてできるわけなかった。

「ありがとう。さあ、いただこうか。最近、仕事の方はどう?」

 仁志さんは柔和な笑みを見せて、私を気遣った。こうやって、お互いをわかり合っていこうって示してくれたみたいだった。

 私の生い立ちも、性格も、仁志さんなら全部わかってくれてるだろう。それでも私が欲しいって言ってくれるなんて、そんな男性、もう現れない気がした。

 清貴さんは私に変わらないといけないって言うけれど、仁志さんは変わらなくてもいいんだって言ってくれる。

 仁志さんは私を甘やかしてくれるだろう。でもそれがいいことなのか、今はまだわからなかった。
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