嘘よりも真実よりも
 それを考えると、みちるはなんて素っ気なかっただろう。まったく俺に興味を示す様子のない彼女を前にすると、今までつちかってきた自信が一瞬にしてなくなるみたいだった。

「金城さん、今日はもうお帰りですか?」
「いや、これから打ち合わせだよ」

 厳密に言うと、取引先との食事会だが、詳細を話す必要はまったく感じない。

「いつもおつかれさまです」
「椎名さんは上がりの時間かな。おつかれさま」

 受付は18時に閉まる。彼女は定時に帰宅するから、幾度か飲みに行きたいと誘われたことがある。実現したことは一度もないが。

「あのっ、金城さん……」
「急いでるので」

 彩香に背を向けて片手を上げる。そのまま受付から離れようとした俺の前を、一人の青年が通り過ぎた。

 青年を目で追う。面識はないが、俺は彼を知っている。富山清貴だった。

「あ……」

 清貴は小さく声を上げると、ゆっくり振り返った。彼も俺を知っているみたいだった。

「金城総司さん?」
「はい。富山清貴さんですね」
「あー、やっぱり。雑誌でお見かけしたことありますよ。今をときめくスーパーエリートの紹介記事で」

 清貴はにやにや笑うと、片手をポケットに突っ込んだまま近づいてきた。

 少しだけ拍子抜けした。やけに気さくだ。富山仁志も物腰が柔らかな男だが、清貴はどちらかというと庶民的な親しみやすさを持っている。
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