嘘よりも真実よりも
「なるほど。いい男ですね。……なるほど」

 無遠慮に俺をじろじろ眺めると、勝手に納得している。みちるから何か聞いてるのかもしれないと、とっさに身構える。

「先日はみちるがお世話になったようで」

 清貴はあっさりとその名前を口にした。俺が動揺するか、試したように思えた。

「エレベーターで迷っておられたので、ご案内しただけですよ」
「エレベーター? あー、なるほど。不慣れなみちるには難しいな。堅苦しい受付で尋ねたりしないだろうしな」

 清貴が、ちらりと受付の彩香に目を移す。彼女は苦笑いしている。

「いや、あなたを堅苦しいって言ったわけじゃないから」

 おかしそうに大げさに笑う清貴を、彩香は不服そうに眺めている。馬が合わなさそうだ。

「富山さん、ちょっとあちらへ」

 うわさ好きの受付嬢の前で軽口ばかり叩く清貴を置いておくのは不安で、ホールの片隅にあるソファーへ誘導する。

 お互いに座ってまで話すことはないだろうが、彼は興味津々に俺についてきた。

「パーティーにもいらしてたそうですね。金城マーケティングの専務だとか?」
「ええ、それも妹さんに聞かれたんですね」

 申し遅れました、と俺は名刺を差し出す。

「妹……ああ、うん、そう」

 名刺を受け取った清貴は、あいかわらずにやにやしながら、胸ポケットをさぐる。
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