嘘よりも真実よりも
帰宅するとすぐ、パソコンを立ち上げた。時間を惜しむように、ネクタイをほどきながら、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、パソコンの前へ戻る。
パスワードを入力し、インターネットを立ち上げる。迷わず、『翻訳家 フリーランス 富山みちる』と検索する。
「あれ? ……違うな」
検索上位のサイトをいくつか開いてみるが、直接みちるにつながる情報は見つからない。
次は、『六花社 富山みちる』と入力してみた。すると、六花社のサイトが検索上位に上がった。
「文芸翻訳って言ってたな」
六花社のサイトを開き、海外作家のページを開いてみる。たくさんの書籍名がズラリと並んでいる。上から順に、ひとつずつ確認していく。
有名なミステリー作家や、歴史ある名作が並ぶ中に、とある純文学作品を見つけた。
「久我……みちる。これか」
どうやら、みちるは富山の名では活動していないようだ。ペンネームぐらい持っていても不思議ではない。
ふたたび、サイトの検索画面に戻り、『翻訳家 久我みちる』と入力してみた。
みちるへ直接つながる連絡先はないかと探してみるが、検索に引っかかるのは、書籍ばかりで、久我みちる個人に関わる内容はまったく見つからない。
これでは、富山みちるが久我みちるなのかどうかすら見当がつかない。
富山家は莫大な財産を有していると聞く。それだけの名家に生まれたみちるなら、翻訳の仕事に本腰なんていれてない可能性がある。