嘘よりも真実よりも
***
夕食の準備をしようとリビングに入り、灯りをつけた。リビングテーブルの上に置かれた雑誌に目が止まる。
朝にはなかった気がして、近づく。それはビジネス雑誌だった。清貴さんがよく見ている雑誌だが、ほんの少し古びている。
なんとはなしに眺めていると、2年前の雑誌だと気づいた。その上、ふせん紙がついている。好奇心にかられて、ふせん紙のページを開き、ちょっと息を飲む。
若きエリートたち、と題された記事に、金城総司さんが載っていた。彼が金城マーケティングの専務就任後に受けたインタビュー記事のようだった。
「ただいま、みちる」
「清貴さん、おかえりなさい」
リビングに入ってきた清貴さんに、頭を下げる。彼は私を通り過ぎ、雑誌に指を置く。
「彼は仕事がはやいな」
「仕事がはやいって?」
「六花社に電話があった。みちるに翻訳の仕事を頼みたいってね」
「金城さんが、私に?」
驚いて、目を丸くする。
どうして私が翻訳家として活動してるって知ってるんだろう。にやける清貴さんを見てると、彼が何かしたんじゃないかって思えてくる。
「みちるに会いたくて仕方ないんじゃないか?」
茶化す清貴さんに、眉をひそめる。
「お仕事なんですよね」
「仕事にかこつけてるかもね。まあ、とりあえず、会ってきたらどう? 企業案件ならやる価値はある」
清貴さんは胸ポケットから取り出したメモ用紙をテーブルの上に置く。総司さんの連絡先が書いてあるみたいだった。
「……わかりました」
気は進まない。だけど、仕事の依頼なら、むげにはできない。
「みちるから電話入れるって伝えておいた。金城さん、忙しいらしい。今日なら、22時過ぎにと言ってたよ」
「私から?」
連絡を待つのも落ち着かないけど、連絡するのはもっと落ち着かない。
「先方にはみちるの連絡先伝えてないから。つながらないようなら、明日、六花社に連絡くれるように伝えてある」
「そんなにお手数はかけられません」
「だったら、電話するといいよ」
「……そうします」
清貴さんは大きくうなずいて、雑誌を脇にはさむとリビングを出ていった。
夕食の準備をしようとリビングに入り、灯りをつけた。リビングテーブルの上に置かれた雑誌に目が止まる。
朝にはなかった気がして、近づく。それはビジネス雑誌だった。清貴さんがよく見ている雑誌だが、ほんの少し古びている。
なんとはなしに眺めていると、2年前の雑誌だと気づいた。その上、ふせん紙がついている。好奇心にかられて、ふせん紙のページを開き、ちょっと息を飲む。
若きエリートたち、と題された記事に、金城総司さんが載っていた。彼が金城マーケティングの専務就任後に受けたインタビュー記事のようだった。
「ただいま、みちる」
「清貴さん、おかえりなさい」
リビングに入ってきた清貴さんに、頭を下げる。彼は私を通り過ぎ、雑誌に指を置く。
「彼は仕事がはやいな」
「仕事がはやいって?」
「六花社に電話があった。みちるに翻訳の仕事を頼みたいってね」
「金城さんが、私に?」
驚いて、目を丸くする。
どうして私が翻訳家として活動してるって知ってるんだろう。にやける清貴さんを見てると、彼が何かしたんじゃないかって思えてくる。
「みちるに会いたくて仕方ないんじゃないか?」
茶化す清貴さんに、眉をひそめる。
「お仕事なんですよね」
「仕事にかこつけてるかもね。まあ、とりあえず、会ってきたらどう? 企業案件ならやる価値はある」
清貴さんは胸ポケットから取り出したメモ用紙をテーブルの上に置く。総司さんの連絡先が書いてあるみたいだった。
「……わかりました」
気は進まない。だけど、仕事の依頼なら、むげにはできない。
「みちるから電話入れるって伝えておいた。金城さん、忙しいらしい。今日なら、22時過ぎにと言ってたよ」
「私から?」
連絡を待つのも落ち着かないけど、連絡するのはもっと落ち着かない。
「先方にはみちるの連絡先伝えてないから。つながらないようなら、明日、六花社に連絡くれるように伝えてある」
「そんなにお手数はかけられません」
「だったら、電話するといいよ」
「……そうします」
清貴さんは大きくうなずいて、雑誌を脇にはさむとリビングを出ていった。