嘘よりも真実よりも
 富山家に身をひそめていれば、余計な喧騒にわずらわされずに生きていける。富山の家と、ほんの少しの仕事があればそれでいい。ささいでぜいたくな願いを、仁志さんと清貴さんが叶えてくれる今があるから。

「充実されてるんですね」
「はい、とても」

 清々しい気持ちで答えるのに、総司さんは眉をひそめて私を見つめている。

「充実してると言いながら、悲しそうにするんですね」
「……悲しそうですか?」

 戸惑いながら尋ねる。
 彼も言うのだ。私は不幸そうに見えると。

「俺と付き合いませんか? 今、お幸せだとしても、もっと充実した生活にする自信があります」
「これ以上のぜいたくは望んでいないんです」
「いくらぜいたくしても構わないと思いますよ。精神的なぜいたくに際限などいらないでしょう」

 穏やかにほほえんで、彼は手のひらを差し出す。辛抱強く、私がその手を取るのを待っている。

「私は恵まれていたんですね」
「みちるさん?」
「恵まれていたんです、とても。昔はそう思っていなかったのかもしれないんですけれど。こうして口にしたのは初めてです。ふしぎですね。金城さんにこんなお話するなんて」

 総司さんの手に両手を添えて、そっと指を折る。軽く突き放すように押すと、彼はじっと私を見つめたまま、手を引いた。

「こんな風に言うのは、おこがましいんですけれど、私のことはあきらめてください。ご好意はうれしく思っています」

 立ち上がり、頭をさげると、総司さんも素早く立ち上がる。
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