嘘よりも真実よりも
***


 土曜日の午後から出かけませんか?

 アザレアホテルで総司さんと会った三日後、電話でデートのお誘いがあった。

 本当に会うんですか?

 そう尋ねたら、あたりまえです、と返事がかえってきて、断りきれずに会うことになった。

 お気に入りのイヤリングをして、鏡にうつる顔を眺めた。ほおに手を当てる。幸せそうに見えない幸の薄い私がそこにいて、何を浮かれてるんだろうって、心が萎縮する。

 断りきれなくて、なんて言い訳しながら、本当は私だって総司さんに会いたいって思ってる。その気持ちを認めたくないと思えば思うほど、鏡の中の私は悲しそうに私を見つめる。

 腰まで伸びた長い髪を結い上げて、ワンピースの大きなリボンを首の後ろで縛った。

 デートに出かけるみたい。浮かれてる私が透けて見えるようで、恥ずかしい。

 ネックレスをつけ、小さなバッグを持って、部屋を出た。

 屋敷の端の部屋が、私の住まい。仁志さんや清貴さんと共有するのは、リビングと玄関だけ。

 使われていない部屋の前を通って、玄関へ行く途中、向かいから歩いてきた仁志さんに気付いて、足を止めた。彼も、出かけるところのようだった。

「みちる、出かける?」
「はい。少しだけ」
「そう。じゃあ、一緒に出かけないか。待ち合わせの時間まで、まだあってね。買い物なら付き合うよ」
「……はい。仁志さんがそうおっしゃるなら」
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