嘘よりも真実よりも
*
何時でもかまわないので、来てください。
待っています。
総司さんのメールには、そう書かれていた。
スマホを握りしめて、アザレアホテルへ向かって走った。まだ待っていてくれてるだろうか。誰かに会うために心を乱すなんて、久しぶりだった。
アザレアホテルのロビーは、平日とは別の顔を見せていた。家族連れやカップルが多くいるロビーの中を進む。
ロビーにある絵画の前で、総司さんは待っていると言ってくれた。ラウンジの前を通り、壁面に飾られた大きな絵画へ足早に向かう。
「みちるさんっ」
後ろから突然手首をつかまれて驚いた。ハッと振り返ると、総司さんが真剣な眼差しを私に向けていた。
「金城さん……ごめんなさい。ずいぶん遅れてしまって……」
「遅れると、連絡くれたじゃないですか」
彼は表情を和らげて、手首から指を外す。
「実は、仁志さんとお出かけすることになって」
「お兄さんと? そうですか。用事は済んだんですか?」
お兄さん、だなんて、やっぱり誤解してる。
仁志さんは私にちょっと意地悪をした。まだ待ち合わせに間に合う時間だったのに、スーツを1着見立ててほしいと言った。
プロポーズを断るなら、願いを一つだけ聞いて欲しいなんて、らしくない意地悪だった。
1時間以上遅れて来たのに、兄と会っていただけ、なんて言い訳を、総司さんは簡単に信じた。胸がちくりと痛んだ。彼に嘘をつくのは嫌だった。だけど、黙っているのも、嘘をつくのと同等だった。
何時でもかまわないので、来てください。
待っています。
総司さんのメールには、そう書かれていた。
スマホを握りしめて、アザレアホテルへ向かって走った。まだ待っていてくれてるだろうか。誰かに会うために心を乱すなんて、久しぶりだった。
アザレアホテルのロビーは、平日とは別の顔を見せていた。家族連れやカップルが多くいるロビーの中を進む。
ロビーにある絵画の前で、総司さんは待っていると言ってくれた。ラウンジの前を通り、壁面に飾られた大きな絵画へ足早に向かう。
「みちるさんっ」
後ろから突然手首をつかまれて驚いた。ハッと振り返ると、総司さんが真剣な眼差しを私に向けていた。
「金城さん……ごめんなさい。ずいぶん遅れてしまって……」
「遅れると、連絡くれたじゃないですか」
彼は表情を和らげて、手首から指を外す。
「実は、仁志さんとお出かけすることになって」
「お兄さんと? そうですか。用事は済んだんですか?」
お兄さん、だなんて、やっぱり誤解してる。
仁志さんは私にちょっと意地悪をした。まだ待ち合わせに間に合う時間だったのに、スーツを1着見立ててほしいと言った。
プロポーズを断るなら、願いを一つだけ聞いて欲しいなんて、らしくない意地悪だった。
1時間以上遅れて来たのに、兄と会っていただけ、なんて言い訳を、総司さんは簡単に信じた。胸がちくりと痛んだ。彼に嘘をつくのは嫌だった。だけど、黙っているのも、嘘をつくのと同等だった。