嘘よりも真実よりも
「はい。兄の買い物に付き合っていました」

 だったら、いっそと、嘘をついた。

「仲がよろしいんですね」
「仁志さんも清貴さんも、とても優しくしてくれます」
「こんなにお綺麗な妹さんがいたら、それは可愛がるでしょう」
「金城さんにお会いすることも伝えて来ました」

 手放しで褒めてくれる彼の言葉をくすぐったく感じながらそう言うと、彼は困り顔で髪をかき上げた。

「それは牽制ですか。今夜は帰したくないなんて、言えなくなりました」
「……あ、そういうつもりでは」
「いいんです。みちるさんに1分でも1秒でも会えたら、それで」

 いたずらっぽく笑う総司さんを初めて見た。私に会えて嬉しいって、全身で伝えてくれる人なのだと思う。

 彼は私をじっと見つめたまま、しばらく無言だった。落ち着かなくて、髪に触れた。走ってきたから、乱れてるかもしれない。

「おかしいですか?」
「いいえ。今日もとても美しいなと」
「ありがとうございます」

 気恥ずかしく思いながら頭を下げると、彼は目を細めてほほえむ。

「すごくタイプなんです。とても好きなお顔です」
「そんな……」
「ずっと見つめていたいです」
「あの……、困ります」
「そういう謙虚さも好きですよ。好きなところをたくさん増やして、はやくお付き合いを承諾してもらいたい」

 照れくさそうに笑う総司さんは少年のようだった。優しくて、辛抱強くて、それでいて、大人の魅力に溢れた美しい人。ふしぎな魅力を持った彼に、私なんかが好きになってはいけなかった。
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