嘘よりも真実よりも
 彼の優しさの前で、私はなんて醜いんだろう。本当のことが言えなくて、嘘ついて、彼の愛を得ようとしてるなんて。

 私は謙虚なんかじゃない。怒られないように、富山の迷惑にならないように、萎縮しながら生きてきただけ。

 そして、彼が褒めてくれるこの顔をくれたのは、会ったこともない父……。絶対に彼に知られたくない父の存在が、鏡を見るたびにまざまざと思い知らされる。

「総司さんの方が謙虚です」

 本当に謙虚で優しい人は、総司さんみたいな、太陽のように明るく、愛情をたくさん受けて育った人だろう。だからこそ、私は彼に惹かれる。

「俺が? 面白いことを言いますね。みちるさんを抱きしめたくてたまらないのを我慢してる姿が謙虚に見えてるなら、おかしいな」
 
 うっすら笑む彼の指が、私の指先に触れる。

 出会った時から無遠慮に触れてきた彼にとって、指を絡ませるなんて大した行為じゃないのに、まるで初めて触れるみたいに遠慮がちに手のひらを重ねる。

「今日は、時間の許す限り、一緒にいたいです」
「……はい。総司さんにお任せします」

 時間はいくらでもあって、戸惑いながらそう言ったら、彼は優しく私の手を握った。
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